約 束 |
夕 輝 文 敏 「いいか、今年のクリスマスは特別なんだ。明日の夜八時教室に集合だ。わかったな」 初の言葉に正春も武も大きく頷いた。 年が明けて三月になると、三人の小学校は閉校となってしまう。全校生徒十二名中五年生は初たち三名であった。 初たちが生まれる前に、この街を支えていた炭鉱が閉山となってしまった。それから街は急速に衰退し、初たちが物心ついた頃には、人口四百人ほどの萎んだ街になっていた。 「お父さん、今までのクリスマスでね、一番思い出に残っているのはね、どんなクリスマスだった」 正春は娘からそう聞かれた瞬間、あのときの初の言葉を思い出した。 「それはね、お父さんが小学の教室で友達と集まったときのクリスマスだな。あれは、お父さんが小学校五年生のときだった...」 あの年の十二月二四日夜八時に、初、正春、武の三人は教室に集まった。 「今夜は俺たちにとって、忘れられないクリスマスにするんだ。これから大人になったて、これ以上のクリスマスはないぐらいにな」 初は正春と武の顔を覗き込み、白い息を吐きながら言った。 「うん、大人になったって絶対に忘れられないクリスマスにする」 春になると父親の仕事の関係で千葉へ行くことになっている武が言った。 「俺だって、忘れない。俺たち、ここの最後の五年生なんだから」 正春も白い息を吐きながら言った。 その夜、三人は少し興奮しながら七輪の火を囲み、ローソクの灯りの下顔を寄せ合っていた。教室は昼間とは異なり、ローソクの灯で照らし出され幻想的な雰囲気に包まれていた。冷え切った空気は、初たちに寒さを感じさせるより、快い緊張感を与えていた。 三人は、それぞれが餅、ケーキなどの精一杯のご馳走を持ち寄った。 「校長先生言ってたけど、この学校の今までの卒業生九七九〇人にもなるんだって。こっれて凄いよな。この街の人口が四百人ぐらいだから、えーと...とにかく、とにかく凄いんだ」 武が自慢そうに言った。 「そうだよ、父さん言ってたけど、炭鉱がまだ活気があったころは、この校舎でも狭いぐらい沢山生徒がいたんだって。今だって、この大きな校舎夕張の本町の学校に負けないもんな」 正春も誇らしげに言った。 「だけど、俺たち五年生だから、ここの卒業生にはなれないんだよな...」 初は少し悔しそうに二人の顔を見て言った。 三人は思っていた。あと一年閉校が延びていたなら、最後の卒業生になっていたのにと。 しばらく沈黙が続いた後初が言った。 「春になったら、どうするんだ」 「俺んちは、清水沢に引っ越してそこの小学校へ通うんだって、母さん言ってたけど...」 正春は、そっけなく言った。 「俺んとこは、千葉へ行くんだって。だから俺も一緒に...千葉なんて一度も行ったこともないし、俺も清水沢で良かったのに」 武は少し涙声になっていた。 「初はどうするんだ」 正春は遠慮しがちに聞いた。 「俺、札幌の母さんとこで暮らすことになったって、ばあちゃんが言ってた。本当は、じいちゃんとばあちゃんと一緒にいたかったけど...」 初はうつむいて言った。 初の両親は、初が生まれて間もなく離婚し、一時期母親に引き取られたものの、初が三歳のときその母親も行方不明になってしまった。その後初は、この街で母方の祖父母に育てられた。 元採炭夫の祖父も最近体が弱ってきていた。そんなとき、急に母親が現れ初を引き取りたいと言ってきた。血の繋がりがあるとはいえ、初にとって母は未知の人であった。 沈黙が続いたあと突然教室の戸が開いた。初たちは、懐中電灯の灯りに照らし出された。 「こんなところで、おまえたち何をしてるんだ」 それは校長先生の声だった。三人はとっさに立ち上がった。 「校長先生、俺たち、クリスマスやっているんだ」 武が小さな声で言った。 「クリスマス、こんな時間に教室でか」 校長先生は、三人の顔をのぞき込んで言った。 「俺たちもう最後だから、皆でここに集まろうって、俺が声をかけたんだ」 初は校長先生の目をしっかりと見て言った。 「今夜は、大人になったって忘れないぐらいの、最高のクリスマスにするべと思って」 正春もはっきりと言った。 三人の顔を見ながらしばらく考えて、校長先生は言った。 「そうか、おまえたちも春になったらお別れだもんな。そしたら、先生帰りに家まで送って行くから、一緒にその最高のクリスマスやるべ」 校長先生も初たちと一緒に七輪の火を囲んだ。窓ガラスには薄い氷の結晶が模様を描いていた。 「それにしても、ここは寒いな。一緒に宿直室まで行くか」 校長先生は、白い息を吐きながら言った。 「だめだよ、校長先生。俺たちのクリスマスは、この教室でないと、最高のクリスマスにはならないんだ」 武は力を込めて言った。 「そうか、わかった」 校長先生は笑みを浮かべ三人に言った。 「校長先生、これ飲む。じいちゃんが採ってきた山ぶどうのぶどう酒だ」 初は、一升瓶を先生の前に置いた。 「なんで、おまえたたち小学生がぶどう酒持っているんだ。それに、先生は今夜宿直当番だから...」 「したって、校長先生さっきから息吐いたとき、酒臭かったべさ」 正春は上目づかいで言った。 「うん、そりゃ先生だって、この学校で最後のクリスマスだも、思い出に少しぐらいはな...」 それから、初たちは校長先生からこの学校の話を聞きながら、一緒にお菓子を食べ、ほんの少しだけぶどう酒を飲んで、楽しくときを過ごした。 そして、家に帰るとき初は正春と武に言った。 「俺たち、十年後も、もう一度ここに集まるべ、なあ」 「うん、集まるべ、十年後」 正春も武も少し興奮気味にこたえた。 正春は、娘と妻に初たちと過ごしたクリスマスの思い出を話した。だが、十年後にまた集まるという約束については話さなかった。 正春自身も、あれは子供の頃の一次的な感情の高ぶりが生み出したものと思っていた。それというのも、その翌年小学校は解体され、校舎はなくなってしまったからであった。それでいて、あの約束は未だに神聖なものにも思えていた。 あれから、十五年のときが流れた。武とは今でも音信があるが、初とは中学を卒業した頃から途絶えていた。 初は一時期札幌で母親と一緒に暮らしていたが、母親は好きな男の人ができると初を残して何処かへと消えてしまった。そして、結局初はホームに引き取られ、中学を卒業するまでそこで暮らした。その後中学を卒業して横浜の寿司屋に住み込みで就職したが、そこも間もなく辞め、初の音信は途絶えてしまった。 その夜、正春は娘が寝た後、アルバムから古い写真を取り出した。そこには、最後の在校生十二名の顔が写っていた。初はニコリともせず、少しレンズを睨みつけるような顔をしていた。 あの頃、初は何かに挑むようにいつも口を尖らせていた。今にして思えば、初のところだけが入学式も運動会も両親がいなかった。そんな境遇の中で生きていくのは、人よりも肩肘を張るしかなかったのだろう。 正春は、クリスマスツリーの明かりを見ながら、妻とワインを飲みそんなことを考えていた。 どのくらい時間が過ぎたのだろうか、少しうとうとすると、誰かがベランダのガラスを叩いていた。 「うんー、何だろう」 また窓ガラスを叩く音がする。正春は、ソファーから起きあがるとベランダへと歩み寄りカーテンを開けた。すると、降りしきる雪の中あの初が立っているではないか。背の高くなった初は、コートも着ずに紺色のセーターにマフラーを首に巻いていた。 正春は、急いでベランダの戸を開けた。 「初...どうして、ここに...」 「何言ってるんだよ、あのとき約束したろう。クリスマスの夜、またあの教室に集まるって」 初は目を輝かせて言った。 「えっ、だってあれは...」正春が躊躇すると初は 「さあ、はやく来いよ」と言った。 正春は急いでコートを着て外に出ると、そこには武もいた。 「武...おもえもいたんだ」 武は照れ笑いを浮かべ、初の影から顔を出した。武は三年前に東京で会ったときと同じ大人の顔であった。 「でも、こんな時間にどうやってあの学校へ行くんだよ」正春がそう言うと 「大丈夫だよ。俺近道知ってるんだ。だから行こう」と初が言った。 「正春、初の言うとおりしていればいいんだよ。俺たちいつもそれで上手くいってたんだから」武も続いて言った。 初を先頭に三人は、雪の中を歩いた。正春にとっては今まで通ったことのない道であった。やがて吹雪きになり前の道路も良く見えなくなってきた。 「初、本当に大丈夫なのか。ほとんど前が見えないけど」と正春が言うと 「正春、何も心配ないって」と武がこたえた。 三人は、吹雪きに立ち向かうように黙々と歩いた。どのくらい歩いたのだろうか。やがて大きなカエデの木にたどり着くと、さっきまでの吹雪きが嘘のように止んだ。そして、雲の切れ間からは月が見えてきた。カエデの木の向こうには、大きな校舎が月明かりに照らし出されていた。 「ほら、学校、見えてきたろう」 初は正春の顔を見ると笑いながら言った。 正春は校舎を見ているうちに、やっと三人でここに帰ってきたんだという不思議な気持ちになっていた。 「正春、これ見ろよ」 武が記念碑を指して言った。 そこには、最後の在校生十二名の名前が刻まれていた。初、正春、武の名もあった。 「うん、俺たちの名前もある。俺たち最後の五年生だったからな」 正春は誇らしげに言った。 三人は記念碑の上に積もった雪を払いのけると、一人一人の顔を思い出しながら刻み込まれた名前を慈しむように手でなぞった。 「さあ、行くべ」 初は二人を促すように言った。 しばらく歩いて行くと、五年生の教室のあたりに灯りがついていた。 「あれ、誰かいるのかな」と正春は言った。 「校長先生だよ。俺たちの約束思い出して、先生先に来たんだべ」 武は嬉しそうに言った。そしてもう一度三人で小学校を見上げた。白い雪に覆われた大地の上に、校舎は凛として月明かりの中で輝きを放っていた。 初たちは、降り積もった雪の校庭を前に進んだ。「さくっ、さくっ」とまだ誰も踏み入っていない雪原に三人の足跡が刻まれていく。 校舎の前にたどり着くと、三人はもう一度大きな校舎を見上げた。初はガラス戸の玄関を開けた。「ギイ−」と軋む音が建物の中に響いた。 「ああ、この空気昔のままだ」 思わず初が言った。 壁には「思い出いっぱい。そして永遠(とわ)に」と書かれた横断幕が張られていた。 「この言葉、閉校式のときの...」 武は懐かしそうに言うと、横断幕に手を触れた。 「何だか、この校舎、まるで生きているようだな。本当はとっくの昔に壊されてしまったのに...」 正春がぽつりと言った。 「何言ってるんだよ、俺たちの学校が消えてしまうわけないだろう。俺たちが心の中でしっかりと覚えていると、いつでもちゃんとここにあるんだ」 初は少し大きな声で言った。 「そうだよ、俺たちが忘れない限り、学校だって、この街だって消えたりしないさ。俺たちだって、いつまでも...」 武も正春に少しムキニなって言った。 正春は二人の言葉を聞きながら、自分だって同じ気持ちなのに初と武に悪いことをしてしまったと後悔していた。 そのとき、校長先生が階段から降りてきた。 「おお、三人とも来たか、外は寒かったべ。先生先に来て教室暖めておいたから、さあ行くべ」 三人は校長先生の言葉にうなずくと、階段を上がって行った。 教室の戸を開けると、ロウソクの灯がともされていた。校長先生は、クリスマス用の太いキャンドルを十本ほど教壇の前に置いていた。 「ああ、俺たちの教室だ...」 正春は、入り口に佇んで言った。 「さあ、ここに座るべ」 武は教壇の前に机と椅子を並べながら言った。 「また、こうして皆でここに帰ってこれてうれしいな。校長先生も来てくれたし...」 初は顔をくしゃくしゃにして喜びながら言った。 ロウソクの灯りの中で、みんな良い顔をしていた。 「あのとき、おまえたち十年後にまた集まろうって言ってたな。だから先生五年前から毎年クリスマスになるとここで待っていたんだぞ。初、正春、武の三人をなあ...」 「校長先生、あの約束ずっと覚えていてくれたんだ」 正春は思わず言った。 「俺あの頃色々あって、十年目にはここにこれなかったんだ。だけど、今夜正春が娘に、あのときのクリスマスが今までの中で最高だって言うから、何だかうれしくなってきて...」 初は、目を輝かせながら言った。 「だから、十年目は過ぎてしまったけど、今夜はここに来ようと思って」 武もうれしそうに言った。 「そうか、正春、あのときのクリスマスが最高だったか。おまえたちまだ子供だったのに、この街出てから良く頑張ったなあ。先生もこの学校の十二名の生徒のことが忘れられなくてなあ。そして、毎年クリスマスになると、おまえたち三人のことを思い出していた。特に初は大変だったな、大人の都合であっちこっちやられて。先生力になれなくて、本当に悪かったな...」 「なんも。俺この学校で五年生まで皆と一緒に過ごせたから、辛いことがあっても、皆のことや、夕張岳の姿思い出して頑張れたんだ。じいちゃん、ばあちゃんも俺のことめんこがってくれたし。だから、俺なんかまだ幸せな方だ」 初は静かに言葉を選びながら言った。 「そうか。そしたら、乾杯するべ。先生ここの山ぶどうでぶどう酒作ってきたから」 校長先生は、一人一人に紙コップを渡すと、一升瓶から初たちにぶどう酒を注いだ。そして、四人で乾杯をした。 「校長先生、俺たちの小学校の話また聞かせてよ」 武がねだるように言った。 「そうか、久し振りに話してみるか。えーと、昭和のはじめにこの街に炭鉱ができて、間もなく小学校もできたんだ。当時の炭鉱はえらい景気でなあ、次から次へと人が集まって来る。教室も先生の数も追いつかなくてなあ、だから、午前、午後の二部制でなんとか授業やっていたんだ。やがて、鉄筋三階建の大きな校舎ができてなあ、そりゃ、夕張の本町の学校にも負けないぐらいの大きな校舎で、この街の人たちの自慢だった。ところが、おまえたちが生まれる前に炭鉱が閉山になってしまってなあ、その年の夏休みには、四百名もの子供たちが転校して行ってなあ、見送る生徒も先生たちも辛かったそうだ。それから、街はどんどん萎んでしまって、あの年に、閉校になってしまった。でもなあ、この学校は九七九〇名もの卒業生を世の中に送り出したんだ。だから、おまえたちの小学校は、大した学校だ....」 「そうだ、俺たちの学校は大したもんだ」 武は校長先生の真似をして言った。すると、校長先生も初も正春も笑い出した。 「次は先生がおまえたちに聞いてみたいことがある。おまえたち、この学校が好きか」 「当たり前だよ、校長先生」 正春がはっきりと言うと、初と武も大きくうなづいた。 「そうか。それでは、この学校のどこが一番好きか一人一人言ってみれ」 最初に武がこたえた。 「俺はこの学校の歴史だ。ここの石炭は日本の繁栄を作ってきたんだって、先生が教えてくれた。だから、ここの学校は日本を支えてきたんだ。それって本当に大したもんだと思う」 「ほう、歴史か。武良く勉強したな」 校長先生がほめると武は少しはにかんで照れ笑いを浮かべた。 「俺は夕張岳が見えるこの学校が一番好きだ。春には校庭一杯に黄色いタンポポが咲くし、夏は鳥が沢山鳴いているし、秋には山が真っ赤になって、冬には校庭の雪山で転げまわって遊べるし。自然に囲まれたこの学校は最高だ」 正春は顔を輝かせて言った。 「そういえば、春になると、学校の桜の木、きれいな花沢山つけていたなあ」 校長先生も懐かしそうに言った。 「俺はこの学校の先生たちと生徒が一番好きだ。俺のとこ、運動会でも学習発表会でも親来たこと一度もなかったけど、誰もどうしてって聞いたりしなかった。ちゃんと、ほかの子供たちと同じく扱ってくれた。俺この学校の思い出あったから、よそに行って悔しいことあっても頑張ってこれた。俺、この学校にいた頃が一番幸せだった。だから、そんな思い出を沢山くれたこの学校が一番好きだ」 初がそういうと校長先生は初の肩を抱き寄せた。 「そうか、初はここにいたときが、一番幸せだったか。そうか、ここにいたときが...」 校長先生は何か言おうとしたがもう言葉にならなかった。 「あなた、起きて。こんなところに寝ていたら風邪ひきますよ」 正春は妻の声で目を覚ますと、居間のソファーに寝ていた。 正春は夢を見ていた。でもそれはあまりにも生き生きとした夢であった。 翌日正春は娘を助手席に乗せハンドルを握っていた。昨夜の夢のことが気になり、あの街へと車を走らせていた。 「お父さんの小学校、もうないんでしょう」 「うん、だけど夕べ、あの小学校で校長先生と友達とクリスマスしている夢見てなあ。なんだか、急に行ってみたくなって...」 正春は思った。確かに夢には違いないが、それだけでは割り切れない何かが心の中にあった。 「さあ、着いたぞ」 正春はかつて校門が建っていた坂の手前で車を止めると、娘の手を引いて、雪の中を歩きはじめた。小学校の玄関があったところに着くと、正春は思わず声を出しそうになった。そこには何人かの足跡があった。その足跡はあのイタヤカエデの木の下まで続いていた。正春は嬉しくなり、その足跡のかたまりをそっと手ですくい上げた。そこには、初と武がいたような気がした。 足跡は校舎の横にあった桜の木の下で途切れていた。木の下に行ってみると、何か小さな塊が薄っすらと積もっていた雪の下に見えた。正春は近づくと雪の中からその塊を掘り起こした。それは、キャンドルであった。正春には、そのキャンドルは校長先生が灯してくれたキャンドルに思えた。正春はそのキャンドルを大切に車の中に持ち帰った。 「お父さん、それどうしたの」 「これはね、サンタさんがお父さんに置いてくれたプレゼントさ」 「えっ、サンタさんのプレゼント」 「うん、とっても大切なプレゼントさ。お父さんにとっては、最高のクリスマスだ」 その日家に帰ると、正春のもとに一枚のクリスマスカードが届いていた。差出人は大久保初と書かれていた。やっと初が帰ってきたと正春は思った。 正春はキャンドルを取り出しマッチで灯をともすと、語りかけるように言った。 「校長先生、初、武、メリー・クリスマス」 〜十二名の在校生に寄せて〜 鹿島小学校の校庭には、この街の興りから衰退までを見届けてきた樹齢二百年近くのイタヤカエデの木がしっかりとその大地に根を張っている。その傍らには、夕張市立鹿島小学校の記念碑が建っている。そこには、この学校の七十年の歴史を見送ってくれた、最後の在校生十二名の名が刻まれている。 君たち十二名には、この学び舎から全国に旅立った九七九○名の卒業生をはじめ、この街で暮らしていた沢山の人々の思いが寄せられている。君たちはたった十二名の生徒ではなく、この街の歴史を受け継いだ十二名もの最後の在校生なのだ。そんな誇りと自信をいつも持ち合わせていて欲しい。 この大地で育まれた君たちが、幾多の苦難を乗り越え、その後の人生において幸多からんことを心より祈る。 |
(TOPページへ) |