大夕張10景(8)
常盤橋のリズム
画・・・・野 田 淑 雄
文・・・・佐 藤 貞 雄
 ゆれる,ゆれる。一足ごとに右へ,左へ,上下へと,ともすれば体のバランスを崩し,かたわらのワイヤーロープへしがみつかせる。だが,常盤町に住み,通学生などここを通る人たちは,橋げたの浮き沈みに体の調子を合わせてすーっ,すーっと通る。人間の環境の順応能力を,ここに見出せる。
 渡りきると,シューパロ湖へ突き出した3ヘクタールの土地に,樹木と芝生,釣り堀,すべり台,ブランコなどの遊び道具がそろっているサトミ公園がある。湖が満水になると水深5メートル,対岸まで約40メートルになり,ボートでひとときの涼を求める。
 この公園は松尾三四二さん(75)と,妻サトミさん(70)の隠居場所だが,秋風が吹くと野外炊事を楽しむ家族連れが訪れる。20種類の大木が紅葉すると,松尾さんの離れ座敷を借りた同好者の謡曲が,湖面を渡ってくることもある。働きそして憩う。このリズムが,明日への活力を生む。ゆれる吊り橋のリズムがそれへつながる。



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