- 大夕張風物 -
精 炭 ポ ケ ッ ト
画・・・・伊 藤 清 治
文・・・・佐 藤 貞 雄
 4階建てほどの高い建物。うす暗いトンネルが2本,その下につづいている。貨車の列が,このトンネルから,石炭を積んで押し出されてくる。貨車のない,いっぽうのトンネルをのぞくと,水が雨だれのように落ちてくる。石炭が水洗いされたあとの水である。ひと口に積み込み場といわれる精炭ポケットで,石炭はここから汽車で,苫小牧と室蘭の港へ送り出されてゆく。
 坑内から掘り出された石炭は原炭と呼び,選炭場で選別される。昭和の初期までは20〜30人の選炭婦が,かすりの着物に赤い前かけ姿で,ジンマーから選別ベルトへ流れてくる原炭を,手でズリと石炭に選り分けていた。選別された石炭はクラッシャーで,一定の大きさに砕かれて水洗機に回され,さらに『上部』と呼ぶ精炭ポケットへ運ばれる。
いまでは直径2,8メートルのブラッド・フォード・ブレーカーと呼ぶドラムに原炭を入れ,回転させて,石炭と石のこわれ方の違いを利用して,選別と破砕を一度で行ない,水洗して上部へ送る。ここは大きな貯炭ポケットがずらりとならび,精選された石炭が,ベルトで送りこまれてくる。1回に3台の積込みが行われるが,見ているうちに30トン車がいっぱいになる。何百人の手を経た石炭がはじめて商品として完成する。積み出される石炭の多さが,やまの繁栄を裏付けてゆく。



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