- 大夕張風物 -
色 づ く 山 ぶ ど う
画・・・・野 田 淑 雄
文・・・・佐 藤 貞 雄
 秋風が吹きはじめると,かえでが美しい色どりをみせるが,遠目にも,いちばん早く赤くなるのが山ぶどうの葉である。樹木にからみつき,かえでより数倍大きな葉が,木を覆いつくす。葉の間から,黒い粒をつけたかたまりが,ぶらさがっているのを見ると『古里の山』の実感を覚える。
 山ぶどうは立ち木にからみついているもの,平地の笹やぶを,どこまでも延びて実をつける『這(は)いぶどう』とあるが,種類は同じ野生。直径5ミリから小指の先ぐらいまでの大きな粒のものあり,あまずっぱい味が口の中に広がる。実をつけた茎が赤いものの方が甘味があり,松の木にからみついているものはなおうまい。これを自宅加工してつくったぶどう酒は格別である。
 子供のころ,現在進発所に勤務している今勇(49)さんと,いつもいっしょにぶどうとりに行った。当時は,いまの明石町付近までいくと,2時間程でリュックいっぱいとれた。律儀な彼は,先に見つけても手をつけず,筆者を呼び,いっしょに穫った。穫りながら,食べながら,木の上で話しながらのひとときである。ぶどうの汁で舌が紫色になり,相手の舌がおかしいといっていつまでも笑い合っていた。



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