- 大夕張風物 -
湿 原 に 舞 う 水 芭 蕉
画・・・・野 田 淑 雄
文・・・・佐 藤 貞 雄
 たけのこなどの山菜採りに出かけると,思いがけない湿原でこの花が咲いているのを見かけ,一瞬「ハッ」と息をのむ。青い葉を従え,白いラッパ状の花ビラが,あでやかに迫ってくる感じを与える。花の王様はバラだといわれるが,深山で見る水芭蕉(ミズバショウ)は純白で大きく,さながら白い衣装をつけてステージで踊る女王といったところだろう。
 葉がバショウに似ているのでこの名があるが,サトイモ科の多年草で,本州中部から北海道などの寒い沼沢地に自生している。白い花は仏炎包と呼ぶラッパ状で長さが10〜20センチメートルもある。群生し,福島と群馬の県境で,燧岳(ひうちだけ2346メートル)と荷鞍山(2024メートル)の間にある尾瀬沼や,裏磐梯の水芭蕉は有名である。
 6月下旬から7月上旬に夕張岳へ登る。数年前までの登山道で,ヒュッテから約3時間余,標高1200メートル付近を汗をふきふき登ってゆく。本州の山は,約2000メートルで亜高山帯だが,夕張岳は約700メートルから1400メートルあたりが亜高山帯になる。疲れが出てくるころ,右側のせせらぎに水芭蕉の群れがある。「ホー」登山者たちは目をみはり,澄んだ水に清らかな花の姿をうつしているのを見てひと休みする。絵の作者野田氏は,主夕張林道(官行)6kまででかけて,この作品をしあげられた。その努力に敬意を表したい。



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