- 大夕張風物 -
富 士 見 ヶ 丘 ス キ ー 場
画・・・・野 田 淑 雄
文・・・・佐 藤 貞 雄
 大夕張の子供は,スキーがじょうずだ。小学校2,3年になると,山神社からの急斜面を直滑降する。両足を開き,両腕を広げ,蛙のような格好で滑りおりる。途中のギャップで体をうしろへそり返らせ,見ている人をハッとさせるが,すぐ体をたて直し,無事に平地までくる。町の高校生なみの技術だというが,すぐそこにスキー場があり,幼児のときからスキーに親しんでいるからだ。
 灰色の空,長い冬。しかし,スキーをする者には楽しい季節である。スキーを肩にスキー場へゆく。夕張岳に真向かいに傾斜し,走行距離330メートル,斜度10〜25度。昭和32年1月にとりつけたロープウエーと夜間照明設備,また南側には30メートルのシャンツェもある。このスキー場で全日本の選手やインターカレッジの滑降優勝者らが育てられた。
 鹿島のスキー人口は推定3000人といわれているが,そのほとんどが,このゲレンデへ集まる。頂上の鴉(からす)山から,サラサラ粉雪の斜面へ飛び出す。腰をひねり,体重を右,左と移動させると雪煙を長く引いて,美しい曲線が雪面に画かれる。滑りおわってふり返る。赤や黄と色鮮やかなスキーウエアが,斜面に舞うように交錯する。そこに雪空の下の円舞曲が流れ,冬をエンジョイする喜びがある。



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