- 大夕張風物 -
朝 日 に は え る 夕 張 岳
画・・・・野 田 淑 雄
文・・・・佐 藤 貞 雄
 大夕張っ子の自慢の一つに夕張岳がある。小学校の校歌や社歌にも歌われているが,古くは明治末期に不幸の詩人といわれた横瀬夜雨の「独木舟」の一節にも「さめてはつらき夕張の,猿飛ぶ岳にむせぶかな」とうたわれている。東京へ転出した人からの手紙にも「もう夕張岳はまっ白になったでしょう」と書いてくる。大夕張に住む者,大夕張を去った者にも,思い出に残るのがこの山である。
 車で大夕張へ向かう清水沢から10キロの吉野沢付近まで来ると,右手に美しい氷の壁を思わせる,夕張岳と前岳が姿を現わす。頂上がなだらかなのが本岳。前岳は南岳,中岳,北岳と三つの小さな峰が突き出して,左に姫岳がつらなる。夕張岳はふつう1668メートルと言われているが,正しくは1667,8メートルである。前岳は南岳が一番高く1480メートルで,姫岳は1352,8メートルである。
 夕張岳の本当の美しさを見ようと思ったら,北風の強い日に,神社の裏にある,標高850メートルへ登るとよい。スキーで一時間半の地点である。ダケカンバの林と霧氷を前景に,大夕張の社宅の上に,夕張岳がどっしりと町を守るようにそびえている。左に芦別岳も見え,時にははるか右手に,日高の連峰も望める。美しい山と真向かいに立ち,きびしい寒気が,心を洗いきよめるような感じを与える。



>>岳麓の里 目次へ