大夕張10景(10)
脈 う つ 工 場 群
画・・・・野 田 淑 雄
文・・・・佐 藤 貞 雄
 坑内入坑者の列について一足工場地帯へ入ると,ほぼ正面に,雪をかぶった円すい形の丘が二つ,三つと見える。坑内からの排せつ物といわれるズリ山である。九州地区ではボタ山とも呼ぶ。大夕張砿業所40年の歴史が,ここに積みあげられる。
 ズリ山を背景に,炭砿の工場群が視界いっぱいに広がる。左の山ぎわから入坑準備のための進発所。高架鉄道を連想させる。昭和28年に完成した新斜坑捲座。人車や,石炭を坑外へ運び出すベルトが,この捲座の太いワイヤーで運転される。大きな仕あげ工場のうしろに,原炭を精選する選炭機。そして貨車への積込みポケットへとつながる。
 町や農村から来た人は,炭砿の雀は黒いという。それもそのはず。黒い産業の正念場がここである。黒い土塊(つちくれ)に,その精魂をうちこみ,より多くの出炭のために,坑内につぐ2次作業場として,これら一つひとつの工場は,深い雪の中に,力強い脈動を打ちつづけてゆく。



>>岳麓の里 目次へ